オンライン小説〜銀の騎士〜剣と魔法のファンタジー物語

銀の騎士外伝-金の王子-

第1章〜王宮〜

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バルボーン城(2)

もうすぐ8歳の誕生日を迎えようとしていたサンバールに、吉報が舞い込んだのは、バルボーンに遅い春がやって来た四月の終わりの事だった。リュニアル家は王宮に居を構える貴族で、代々政治的にも重要な地位を占めていた。父の言う吉報とは、サンバール・レン・リュニアルが、バルボーンお世継ぎの付き人に任命された事だった。

サンバールはいつでも模範的な良い子だったし、王立アカデミーでの成績は常にトップだった。だから、父が吉報だと喜んでいる王命が、たとえサンバールの意にそまぬものだったとしても、表面上は父と一緒に喜んでいるふりをし、当然命令にも黙って従った。

「は〜、何で私がこんな目に……。」
サンバールが泣き言をこぼすのは、誰もいない自室でのみだった。聞いているのは美しい装飾の金のかごに入った、小さな黄色い鳥だけだ。

「もう少し馬鹿なふりをすればよかったな。こんな事になるのなら。」

サンバールは小鳥のかごを開け、中に右手をそっと差し入れた。黄色の小鳥が慣れた様子でサンバールの手に飛び移ると、サンバールは注意深く鳥かごから手を出して、小鳥のくちばしを自分の顔に近付けた。

「お前を連れてはいけないと思うよ。聞いてはみるけれど。」

サンバールは小鳥のくちばしにそっと口付けし、また特大の溜め息をついた。
7歳にしては大人びた理知的な顔だちに、落胆の色が見える。

サンバールはリュニアル家の長子ではなかった。それゆえ家の事も出世の事も何も考えずに、好きな事をしていられると思い込んでいたのだ。それが計算ミスだった。
サンバールはことのほか勉学を好んだ。
本を読んだり分からない事を考えたりするのが大好きだった。

王立アカデミーには6歳で入学した。授業はおもしろく、一年で三年分の単位をとった。時間ができるとアカデミーの巨大な図書館に隠り、好きな本を何時間でも読んだ。毎日閉館まで残っているので、図書館の館長とも友達になった。毎日が楽しく、希望に満ちていた。どんな時にも自分は自由だと感じられたからだ。しかし、幼い王子殿下のお守役を仰せつかっては、この先死ぬまでもはや自由はやってこないだろう。

リュニアル家の行く末を考えれば、断る事も出来ない。
「決まってしまった事は仕方がないさ。私の運が悪かっただけだ。」
サンバールはまた小鳥に話し掛けた。

オンライン小説「銀の騎士」 イメージ サンバール

王子殿下に会った事はなかったが、王妃様はバルボーン一の美姫とうたわれた大層な美貌の持ち主だ。王子殿下はその王妃に瓜二つだと聞いた事がある。美しさ故にちやほやされた我が儘ものに違いない。

「は〜嫌な役目だ。」

サンバールは今日十回目の溜め息をついた。
今日は午後一番に王の間で王子殿下に忠誠を誓う事になっているのだ。
当然王立アカデミーも辞めねばならず、昨日教授達や図書館の館長に挨拶をして来た。これからは王子殿下と一緒に、家庭教師の指導を受けなければならない。三歳の王子にあわせた内容で。

時間が許せばサンバールにも勉強の時間が与えられる。その証拠にサンバール付きの家庭教師が任命されているらしい。昨日アカデミーの教授がそっと教えてくれた情報だ。ただしあくまでも時間が許せばの話だ。王子殿下がサンバールを解放してくれなければ、一日中殿下のお守をしなければならない。 もう、王の間に行かなければならない時間だ。

「仕方がない、行って来るよ。」

サンバールは鳥かごを覗きながら、独り言の様に小さく呟いた。

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