オンライン小説〜銀の騎士〜剣と魔法のファンタジー物語

銀の騎士続編

第5章〜暗雲〜

オンライン小説〜銀の騎士〜剣と魔法のファンタジー物語

(1)

フェンの村の調査の収穫は大きかった。
まだ推測の域を出ないが、多くの事が明らかになったからだ。

まず第一に、人間の魔物化が起こり、男だけが変化した事。
第二に一斉の魔物化に銀の小箱が関与している可能性が高い事。
第三に何者かの意志で、運命を背負ったものが集められたらしい事。

これらの事が確信出来ただけでも、大きな進歩と言えた。
それとは別にもう一つ、気になる変化が起こっていた。
調査中、街で耳にした盗賊集団のうわさだった。

銀のゼヒアと名のる盗賊集団のトップは、見事な銀色の長髪をもち、自らを銀の騎士の再来だと謳っているというのだ。万が一これが本物だとしたら……。今、この時期に銀の髪を持つものが現われたのだとしたら……。

”悪しき力を滅ぼす為に、銀の髪を持つものが、何のかかわりもないとは思えない”

アルビンはゼヒアに会ってみたいと思っていた。それが罠だったとしても。
本物であるはずはないと思いながらも、予感がアルビンを苛んだ。

”いやそんなことより今はロールが心配だ。”
顔面に風を受けた馬上で、物思いを振り切る。

ロールを中心に大陸の西側ほぼ全土に張り巡らされていた長の護りは、すっかり消え失せている。長が自分から護りを解くとは思えない。とすると……

アルビンは黒毛の雄馬を駆ってサニ村まで一気に駆け抜けた。
馬には気の毒だったが、逸る気持ちを押さえ切れなかった。

川と湖に囲まれたサニ村のまわりは、肥沃な草原が広がっている。
人口わずか三十名足らずの小さな村だ。すべての家が馬の生産を生業としている。

村に入ると、一番手前の牧場で馬を換え、しばしの休息をとった。サニ村の牧場主はみんな、馬を替える旅人に宿と水を提供していた。具のない質素なスープとかたいパンと水だけの食事。辺境の村ではこれが普通だ。寝心地の悪いベッドは少しも身体が休まらない。しかし、馬だけはつややかで生き生きとしていた。

翌朝早く、革で出来た筒状の容れ物に水をもらい、借り受けた栗毛の雌馬と共に出発した。
帰りにまた黒毛の雄馬と交換してもらうことになっている。

「料金は一バルですが、魔物の石があればそれでもいいですよ」

牧場の主人は魔物の石が欲しかったらしい。だが、アルビンは石を持っていなかった。ここに来るまで魔物には出会わなかった。魔物を生み出す力が一気に消滅した為だ。城下町でも魔物の石の値段は急騰している。それを知らない旅人が、以前のレートで石を支払ってくれれば、牧場主は大儲けというわけだ。アルビンが魔物の石を持っていないと知ると、主人はあからさまに落胆を見せた。

アルビンはここサニ村で、自分の身分を明らかにしなかった。この村には何度か来ているし、自分を覚えている人間もいてよいはずだが、誰一人アルビンが先読みの時期長候補だとは気がつかない。前にこの村を訪れた時、丁重なもてなしを受けたばかりか金を払わずに馬を貸してくれた。今は急いでいるのでもてなしを受けている暇はないと考えて名のらなかった。気付かれたら面倒だと危惧もしていた。しかし村人の関心はよそにあり、アルビンは普通の旅人と同じ粗末な部屋に通されただけだった。心配は無用だった。

村人の関心は、銀のゼヒアと魔物の石にしかないようだ。みな刺々しく、言い合いばかりしている。前に見たような心あたたまる風景を見る事は出来なかった。馬達もそんな空気を感じ取っているのか、神経質そうに耳をピクつかせていた。しかし栗毛の雌馬はアルビンを乗せると、じき大人しくなった。

アルビンは馬の耳もとで護りの言葉を囁いて、風とともに走り去った。
「あれ? そういえば今の方、どこかで見た事があるな」
アルビンを見送った馬屋の主人が何か思い出しかけた時、誰かが言った。

「今の旅人は銀のゼヒアの仲間じゃないか? 普通じゃない感じがしたぞ」
馬屋の主人はその考えに同調し、思い出しかけた事をすっかり思考の外に追いやってしまった。
いつもそうだ。何か重要な事を考えようとすると、必ず誰かが邪魔をする。いまいましい事だ。

馬屋の主人は理由もなくイライラする気持ちを持て余したまま、アルビンの疲れ切った雄馬を世話する為に、馬小屋に入っていった。

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